96 いかづちさま
村山の上貯水池に沈んだ所に石川という村がありました。その村には山頂に「雷様」(いかづちさま)という石碑が祀ってあり、村人から「いかづち山」と呼ばれる小高い山がありました。五十六センチメートル程の小さな石碑ですが、これが大層子供の夜泣きに効き目があったということです。
生れて間もない赤ちゃんはよく夜泣きをするものですが、夜中に力いっぱい泣かれると家の者はたまりません。幾晩も続くと皆、睡眼不足になってしまいます。
そこで雷様にお参りをして夜泣きが止まるようにお願いをしました。夜泣きが治ると村のおもちゃ屋で買い求めた竹の横笛をお礼に納めました。今、この石碑は芋窪の天王様の境内に移されてひっそりと建っています。「雷大明神社文正元天戊十月三日」(一四六六)と記されてあったようですが、すっかりすりへって読むことは出来ません。
(『東大和のよもやまばなし』p208)